専門家が回答!更年期症状と漢方にまつわるアレコレ

漢方薬イメージ
●ビューティー&ヘルス

更年期症状の緩和に広く用いられる漢方薬。気になっているけど、どうやって選べばよいの?西洋薬との違いは?など、さまざまな疑問がある方も多いのではないでしょうか?

そこで今回は、漢方薬剤師・森田博美さんに更年期に漢方を使うメリットやおすすめの漢方薬などをお伺いしました!

Q. 漢方における更年期の考え方は?

A:女性の体は7の倍数の年齢で大きく変化し、49歳から前後5年くらいの年齢で、更年期を迎えます。

漢方では、女性の体は7の倍数の年齢で大きく変化します。28歳の年齢をピークに女性は老化が少しずつ始まり、49歳を中心とした前後5年くらいの年齢で、更年期を迎えると言われています。

更年期に起こるさまざまな症状

女性

更年期を迎えると卵巣機能が低下し、女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が減少。それに伴いホルモンバランスが崩れ、体に影響を与えます。動悸・めまい・のぼせ・ほてり・イライラのほか、倦怠感やうつ症状などの不調がそれに当たります。更年期症状の現れ方は個人差が大きく、また症状はひとつに限りません。特に日常生活にまで影響を及ぼす場合を更年期障害と呼び、治療が必要になります。

更年期障害の治療法

更年期障害には主に3つの治療法があります。

  • ・ホルモン補充療法(以下、HRT):減少したエストロゲン(卵胞ホルモン)を補充する方法
  • ・漢方薬
  • ・抗うつ薬や抗不安薬など

医療機関に相談の上、自身の体質や症状に合わせた方法を選ぶことが大切です。

Q. 更年期症状の緩和に漢方薬がおすすめなのはなぜ?

A:漢方では、不調となる要因やバランスをみてアプローチしていきます。

ホルモンの値だけでなく漢方のものさしである「気血水」や「五臓六腑」によって体のバランスをチェックして、不調の大元となる要因をつきとめます。漢方では、一つの症状に一つの薬という対症療法ではなく、体全体のバランスを整えていくため、さまざまな場所に不調が起こるような更年期症状にもアプローチすることができるのです。

Q. HRTと漢方薬の違いは?

A:漢方は、全身のバランスを整えて、やさしく症状を緩和できます。

HRTによる治療では、のぼせ・ほてり・発汗などの症状に高い効果を示します。使いはじめに不正出血・乳房痛・偏頭痛などの副作用がみられることも。これらは、薬の量や飲み方を調整することで治まるものがほとんどです。
このような副作用を考えたとき、漢方薬はより体にやさしく症状を緩和できると考えられます。また、全身の不調を整えてくれるというメリットもあります。

もちろん、体質や症状によって、適切な治療法は異なります。何か不安がある場合は主治医に相談し、ご自身が一番納得できる治療法を選んでくださいね。

Q. HRTと漢方薬を併用してもOK?

A:まずは、主治医への相談を!その上で、漢方薬から始めてHRTを検討してみては?

必ず、婦人科医に相談することをおすすめします。どのような症状があるか、そして自分の体にはどの治療法が合うのか、しっかりと知った上で治療法を選択するのがベストです。
HRTと漢方薬の体へのアプローチ方法は全く異なるので、まずは体にマイルドに効く漢方薬から始め、後にHRTを検討するのも一つの手です。

Q. 更年期症状におすすめの漢方とは?

A:加味逍遥散・当帰芍薬散・桂枝茯苓丸は、3大婦人漢方薬と言われています。

3大婦人漢方薬と言われる、加味逍遥散・当帰芍薬散・桂枝茯苓丸。特に加味逍遥散は、更年期症状の代表的な「のぼせ」「ホットフラッシュ」「イライラ」などに効果的です。また、柴胡加竜骨牡蛎湯や加味帰脾湯は、不眠や不安感の改善に用いられています。

加味逍遥散(かみしょうようさん)

体のバランスや自律神経を調整。イライラやのぼせを鎮めて、血行を促進する効果があります。

当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)

女性に不足しがちな「血」をしっかり補い、血行を良くするのと同時に、水分代謝を整えます。むくみ、足腰の冷えが気になる方におすすめです。

桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)

滞った「血」のめぐりを良くする代表的な漢方薬。更年期症状をはじめ、肩こり、めまい、頭重に効果を発揮します。

柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)

気を整え、鎮静してくれる生薬を配合。動悸、不安感が強い、眠れないなど更年期に起こりやすい症状に幅広く対応します。

加味帰脾湯(かみきひとう)

心身共に疲れている、寝つきが悪い、眠っても眠りが浅いといった症状におすすめ。弱っている気血を整えます。

初めて服用する際は、漢方の専門医や薬剤師のカウンセリングを受けることをおすすめします。

Q. 漢方薬を効かせるポイントは?

A:日々の生活習慣を整えましょう!

漢方では、まず日々の生活習慣を整えること、そして自分の心と体に向き合う姿勢が何より大切だと言われています。例えどんなに良い漢方薬を飲んだとしても、食事や睡眠が乱れていては、効果が半減。特に、脾(胃腸)の健康は、漢方薬をしっかり吸収させるために必要不可欠です。胃腸の調子が悪い方は、まずは消化に良い食事をするようにしてください。

本質的な美容と健康の土台は、規則正しい生活です。その土台づくりによって、更年期症状の治療をはじめ、さまざまな美容法が大きく活きてきます。基本的な食生活・睡眠・適度な運動をぜひ心がけましょう!

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漢方薬剤師・森田博美さん
都内の薬学部卒業後、ダイエット専門の美容クリニックで漢方のカウンセリングと選定に従事。
現在はその経験を活かして商品監修やPRなど多方面で活躍中。将来は、幼少期に住んでいたアメリカ・ボストンで培った語学力を活かして“Japanese Kampo”を世界に広めることを目標にしている。

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